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>>ユング心理学

「グレート・マザー(心の中の母なるもの)」


大地にも例えられる「母なる像」と呼ばれるものの特徴には、二面性が伺えます。
一つは生命や出産という明るい側面であり、もう一つは呑み込むものとしてのイメージから、死や冥界に例えられる、暗い側面です。
「母なる像」は太母(グレートマザー)とも呼ばれ、実際の母親そのものを指すのではなく、人類に共通する心の中の像を形作る「元型」と呼ばれるものの一つです。

ところで、生み出すものとしての「母」を重ねるには慣れていても、それでは、死の側面とは一体、何ぞや?となることでしょう。
そこで、大地を思い出してみてください。土に守られた植物は、春になれば地面から這い出し「誕生」と「生」の季節を過ごします。
しかしながら、やがて死を迎える植物は、やはり誕生した「土」へと帰ってゆくのです。
この、生と死の表情を併せ持つ姿が、太母というまとまりを持ち、私たち人類の心の奥に存在しているであろう。
そうした概念で、意識化された何らかなのです。

ところで、暗い側面を持つ日本の女性像、怖ーい女性のイメージと言えば、昔話に登場する山姥が浮かびます。
「母なる像」は人類に共通するものですから、外国へちょっと目をやっても、例えば魔女などがすぐに思い当たることでしょう。
山姥と言えば、子供を困らせたり食べてしまう姿が有名ですが、山姥も様々で、かくまってくれたり魔よけの道具をくれるという味方の側面もあります。
暗い側面を印象づける山姥もまた、明るい側面を兼ね備えているものですから、まさしく太母の一種であるようです。

さて、この「母なる像」の二面性を心に抱きながら、像のある場所から地続きでもある私たちの現実へと目を向けてみましょう。
現実のお母さんにも、明るい側面と暗い側面があります。
生み出すもの、世話を焼いてくれるものとしてのお母さんは非常に温かいですが、その世話焼きの根拠に、大きく、お母さんの満たされなさがあるとすると大変です。
世話を焼くという外観が、本当は、「子供を手放せないお母さんの中の、孤独感や不一致感」に強く由来しているならば、裏腹に、子供は生き辛さを呈することにもなります。温かい母の仮面の下で、呑み込まれていることを察しているのかもしれません。
この場合、お母さんの中の暗い側面を無視し続けて、ただ明るい仮面だけを無理して被り続けてもよいのでしょうか?
一卵性母子という言葉がありますが、なかなかお嫁に行かない娘さんが、母親からの束縛や母親へのしがみつきを母親への思慕と摩り替えて感覚していることもあります‥。
更に、こうした文法でお父さんがそうなることもあるでしょうし、父や母以外の人もこの文脈にはまってしまう場合もあります。

時として、こうした自愛への再確認(共依存から相互依存へ)や自立への解放等、発達課題を乗り越えるための示唆を与えてくれるのが、太母の二面性でもあります。








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